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アロイス・イラーセク『チェコの伝説と歴史』の邦訳により第48回日本翻訳文化賞を受賞された北海道大学名誉教授の浦井康男先生が、同じくイラーセクの『暗黒 ― 18世紀、イエズス会とチェコ・バロックの世界』(Temno - Historický orbaz)を翻訳され、出版を準備されています。この出版にあたっては資金調達のためクラウド・ファンディングを利用した予約注文出版を考えておられます。予約注文登録の応募期間は、1月10日~2月末です。チェコ文化の研究者・愛好家にとっては非常に価値ある一冊かと思われますので、何卒ご協力をお願いいたします。

以下、浦井先生からの手紙を転載いたします。
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突然のご連絡で恐縮ですが、翻訳本の出版のお知らせです。

小生、浦井康男は北海道大学名誉教授で、北大文学研究科でロシア語とチェコ語の教官をしていました。定年の2011年に北海道大学出版会から、アロイス・イラーセクの『チェコの伝説と歴史』を出版しましたが、幸いにもこの本は日本翻訳家協会主催の第48回日本翻訳文化賞を受賞しました。定年後はこれに続く18世紀始めの時代を扱った、同じイラーセクの『暗黒 - 歴史的姿』(Temno - Historický orbaz)の翻訳をしていました。
それはこの作品のテーマが、チェコ人自身がフス派の自民族とフスに由来する民族文化を弾圧した、歴史的に負の時代を扱っていて、チェコの歴史と文化史の空白を埋めるものだからです。白山の戦い以降の独立を失ったチェコでは、民族文化の衰退とイエズス会による再カトリック化が行われました。これは知識としては良く知られていますが、具体的に何がどの様になされていったのかは、これまでよく分かりませんでした。

今回訳したこの作品は史実を基に創作され、各々の登場人物の立場を描き分けることで、1720年代のチェコの宗教・文化・社会の渾然一体となった状況が、客観的かつ詳細に示されています。そのため翻訳ではその内容を汲んで、『暗黒 ― 18世紀、イエズス会とチェコ・バロックの世界』のタイトルを付けました。
本書で述べられているのは、プロテスタントのフス派の秘密のミサや秘かに持ち込まれた禁書と、イエズス会宣教団の説教や焚書などの宗教的弾圧の具体的な描写、田舎暮らしの没落貴族の生活とビール醸造で財をなしたプラハ市民の富と文化、プラハでも広まったフリーメーソンの活動、また当時のプラハのバロック音楽の世界や官公庁でのチェコ語の衰退の過程、さらにイエズス会によるネポムツキーの聖人への格上げの運動などです。1729年に行われた彼の列聖式は、対抗宗教改革の頂点をなすもので、詳細に記述されています。

この翻訳では、読者のネット検索の活用を図っています。これまで翻訳文学というと、訳者が一方的に提供する情報(訳文と注釈)で、読み進むのが当たり前の世界でした。しかしインターネットが拡充しその内容が確実で豊かになると、読者も積極的にその情報に関わり、理解を深めることが出来るようになりました。特に世界遺産のプラハを始めチェコ各地には、古いものが良く保存されているので有効です。
検索の諸例は下記に示す小生の企画のホームページに示しましたが、拡大縮小が自在のネット上の地図やstreet viewやu-tubeの動画などで、実に様々なことが分かります。本書では検索のキーワードを示し、言語によらずに画像一覧から目的のものが選べるような工夫もしています。

 幸いなことに本書の出版は、東欧・ロシア関係に定評のある成文社に引き受けてもらうことができて、出版形態はA5版の2段組みで(上・下巻に分けて)全840ページを予定しています。ただ本書のテーマは、日本では馴染みが薄く、しかも大部の作品なので、出版社も売れ行きを心配し、またこちらが用意する自己資金も、年金暮らしの身にはかなりこたえます。そこで本書の出版にクラウド・ファンディング(以下クラウドと省略します)の助けを借りたらどうかと考えました。現在日本ではクラウドの会社はいくつかありますが、堅実な企画が多く、実績のある「レディーフォー(READYFOR)」を選びました。

まずインターネット上のこの会社のホームページで、本書の出版企画とその内容、目標金額(百万円)、一口の応募金額(10,500円)と応募期間(1月10日~2月末)を発表し、その企画を読んで賛同された方には、ネット経由で資金の提供をクレジットカードで登録していただきます。そして応募が目標額に達した時点で始めて、クレジットの決済がなされ、クラウドの会社は手数料を差し引いて残金を企画者に渡します。ただ期間内に目標金額に達しなければ、その企画は消滅してクレジットの決済もなく、手数料などの負担は誰にも何も発生しない仕組みです。
小生は上記で得た資金に自己資金を加えて出版社に渡し、出来上がった本をクラウドに応募された方々に、見返り(リターン)として渡すという段取りです。このシステムを使うと、インターネットで広く本書の宣伝が出来ますし、上手く事が運んで目標額に達すれば、出版のための自己資金の不足が補え、出資者にリターンの本書を送ると、それが本書の予約購読になると考えました。一石三鳥ですが、ただ本書のテーマは広く理解され難いものなので、取らぬ狸にならないように色々努力をしています。また別の見方ではクラウドの会社は、本書の宣伝と予約購読の手続きの代行者という位置付けです。

出資金一口の内訳は、本書の予価の2割引(12,000×0.8=9,600円)と消費税分(12,000×0.08=960円)の合計の10,500円(一万五百円)で、送料は当方で負担します。3月始めに最終原稿を出版社に渡しますが、その前にクラウドの結果を知る必要があり、応募の締切を2月末に設定しました。出版は遅くても今年の夏までには出来ると言われています。書店での定価はかなり高額になりますので、ご関心を持たれましたら、予価の2割引で提供できるこの機会を利用して、ぜひ予約購読に御協力下さい。

 この企画を行うクラウドの会社「レディーフォー」のホームページのアドレスは:
https://readyfor.jp/ です。当初は表の方に出るかもしれませんが、そこになくても「プロジェクトを探す」→「カテゴリからさがす」→「本・コミック」の中にあります。
 または https://readyfor.jp/projects/temno で直接そこにたどり着けます。

なおこのホームページは、小生の原稿に専門家が手を入れたものですが、インパクトがあり、アピール度も(本人もいささか恥ずかしいのですが)なかなかのものです。画像も沢山入っていますので、一度ご覧下されば幸いです。


イエズス会士が禁書を発見した場面
イエズス会士が禁書を発見した場面

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本書の目次を示して欲しいというご要望がありましたので、これまでのホームページでは字数制限のため割愛した部分を、新着情報として掲載します。(以下、2016年1月16日追加)

この作品はイラーセクが病に倒れ、未完に終わった『フス派王(1919)』を執筆する前の、1915年、彼が64歳の時に発表したもので、彼の作品群の中では比較的短く、最も円熟した作品の一つです。もっともイラーセクは1930年まで生きて、チェコスロヴァキア共和国の建国にも立ち会い、マサリクの活躍も見ていますが、目を病み重い腎臓病を患った彼は、創作を再開することはありませんでした。

この『暗黒』の原作は、I~LXXVI(1~76)のローマ数字による節の通し番号が並んでいるだけで、部立ても小見出しも何もなく、極めて見通しの悪いものです。本書は歴史小説なので、筋はフィクション(虚構)ですが、背景にはしっかりした史実があります。それは、隠れフス派に対する宗教弾圧の中で、1728年にチェコの地方都市コピドルノで、森番のトマーシュ・スヴォボダが偽りの宣言をした罪で処刑された事件と、1735年にマホヴェツという一家が、逃亡の理由を書いた手紙を残して、国外に亡命したことです。

イラーセクはいくつかの変更を加えた上で、時間も少し戻してこの二つの事件を結びつけ、1723年のカレル六世の戴冠式から始まるこの小説を書きました。なおカレル6世はマリア・テレジアの父で男子に恵まれず、彼女をオーストリア・ハンガリー帝国の後継者にしたために、彼の死後オーストリア継承戦争が起こった人物です。

史実ではマホヴェツは一家で国外に逃亡しましたが、この小説でのマホヴェツは男やもめで一人逃亡し、残された二人の子供はカトリックへの教化のため、プラハに送られます。イラーセクはこの兄妹を1720年代のプラハに投入し、二人の様々な体験やプラハの隠れフス派との接触を通して、当時のプラハの文化的状況を描くという筋立てです。

そのため作品を事件の展開に従って、1~33節(第一部)をマホヴェツ一家が暮らし、そこにイエズス会の宣教団が襲った「スカルカで」、34~61節(第二部)をこの兄妹のプラハでの様々な体験と兄が国外に逃亡する「トマーシュの逃亡」、62~76節(第三部)を森番スヴォボダの処刑とイエズス会によるヤン・ネポムツキーの聖人への格上げを描いた「列聖式」に分けることが出来ます。

ただそれだけでは各節ごとの内容が分かりませんが、幸いにも挿絵画家で有名なA.カシュパルが本作品にも挿絵を書いています。そこでは、ホームページでも使った主要な場面の描写と共に、各節の始めにその節の内容を示す挿絵を必ず載せています。この挿絵は該当する節を探したり、その節の内容を理解したりする際に大きな助けとなりますので、この翻訳でもこれらの挿絵は必ず入れることにしました(きっとチェコ人も困ったのでしょう)。

また本書には、当時センセーションを引き起こしたユダヤ少年シモン・アベレスの殺害を含む、数多くの歴史的エピソードが挿入されていますが、確認が取れるものはほぼ正確であり、これらによって当時の社会的雰囲気が醸し出されていると共に、イラーセクの歴史小説家としての知識の正確さと腕の確かさが再確認できます。

最後になりますが、この企画は反響が大きく私も驚き、クラウドファンディングの力を再認識しています。ただ現在の制度では、公的資金を使う公立図書館や大学の研究者は、クラウドファンディングの予約購読に参加できませんので、それが大きなネックになるのではないかと思っています。そのためこの企画が成功するかどうかは、皆様個々人のお力をお借りするしかありませんので、どうかご支援よろしくお願いいたします。

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浦井 康男(ウライ ヤスオ
1947年に静岡県熱海市に生まれる.京都大学理学部に入学後,文学部言語学科に転部.1976年に同文学研究科博士課程言語学専攻を単位取得退学.1977年に福井大学教育学部,1997年に北海道大学大学院文学研究科に移籍.2011年3月に北海道大学を停年退職後,北海道大学名誉教授.

【研究】
ロシア語では,近代ロシア文章語の研究でコンコーダンスの編纂や論文等多数.
チェコ語では,“Czech Literature in Japan,”Japanese Slavib and East European Studies, vol. 1, 1980, pp. 71-82, 関西チェコ/スロヴァキア協会内の資料として,A.ムハ(ミュシャ)の「スラヴ叙事詩」の解説(CD版),K.J.エルベンの『花束』の翻訳,K.H.マーハ『マーイ』のチェコ語中級読本(共に私家本,2010年)などがある
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